(ハーバード大学病院使用)                         〔携帯・掲示用〕
「医療事故:真実説明・謝罪マニュアル〜本当のことを話して、謝りましょう」(エッセンス版)
 
★1 インシデント(医療事故)発生直後の情報公開についての一般原則
・インシデント発生についての事実だけを伝えましょう――すなわち、何が起きたかということを伝え、どのようにしてなぜその結果が起きたのかあなたが信じていることは伝えないようにしましょう。
・信頼できる情報が手に入ったときには、適切なタイミングで情報提供しましょう。
・さらなる診断や治療について、あなたが推奨することを説明しましょう。
・今後の予想される経過の見通しについて説明しましょう。
★2 十分に情報を伝えるための4つのステップ
1. 患者さんとご家族に何が起こったかを話します。
2. 責任をとります。
3. 謝罪します。
4. 今後の医療事故を予防するためになされることを説明します。
★3 だれが、どのようにコミュニケートするか
・信頼されている医療従事者が、最初のコミュニケーションを主導しましょう。
・次の治療を担当する人が、その次のコミュニケーションを主導しましょう。
・患者さんの主任看護師を、コミュニケーションに関与させましょう。
・コミュニケーションの技術について、スタッフにコーチしましょう。
・静かな個室の空間を、コミュニケーションの場所に選びましょう。
★4 フォローアップ・コミュニケーション
・フォローアップ会合は、早急に行いましょう。
・主治医もしくは治療チームのメンバーが、会合を主導すべきです。
・深刻もしくは困難な事例には、CMO(最高医療責任者)かCEO(最高経営責任者)を関与させましょう。
★5 患者さんとご家族を支える
・患者さんとご家族に、傷害をどのように受け止めているか尋ねましょう。
・患者さんのどのような心配事も真剣に受け止め、徹底的に対応しましょう。
・患者さんやご家族との治療上の信頼関係を維持しましょう。
・患者さんやご家族に、治療上または経済的な相談と支援を受けることができる窓口の連絡先を、教えましょう。
・事故の分析結果が出るまで、すべての医療費請求をいったん保留しましょう。
・経済的サポートを提供するために、どのような手段が取れるか詳細に調べましょう。
★6 患者さんとご家族へのフォローアップ
・退院後の連絡をスムーズに行うために、患者さんに連絡先を知らせましょう。
・患者さんおよびご家族に対するフォローアップのための、複数回の打ち合わせを計画しましょう。
・フォローアップすべき情報が非常に多い場合には、患者さん宅の訪問を予定しましょう。
・精神的および社会的サポートを行いましょう。
・必要な場合には、傷害に伴う支出を補うための経済的支援を継続して行いましょう。
★7 医療従事者への支援
・事故に巻き込まれた医療従事者への支援を提供するプログラムをつくりましょう。
・いろいろな要望に沿う多様な支援サービスを提供しましょう。
・必要に応じて、医療従事者の職務遂行能力に見合った適切な職場の提供や休暇の取得を促しましょう。
・系統立てられた事故の報告や記録手順を整備しましょう。
・患者さんやご家族とコミュニケーションをとることを、医療従事者に促しましょう。
・ピア・レビュー(同業者相互評価)、医療品質保証改善活動(QA/QI)、根本原因分析(RCA)の手順を医療従事者に教育しましょう。
★8 訓練と教育
・患者さんとご家族との対話に関するプログラムをあらゆる階層レベルで展開しましょう。
・医師と看護師に、彼ら自身の感情に対処する訓練をしましょう。
・理事会メンバーや上級管理職に、その責任に関して教育しましょう。
・すべての医療従事者を対象に、毎年、オリエンテーション(導入教育)を提供しましょう。
・多様な双方向的学習方法を開発しましょう。
・医療従事者に、“必要なときに必要なものを必要なだけ”提供できる訓練を提供しましょう。
・重大な事故が起こったら、医療従事者に専門的な援助を提供しましょう。
・危機管理コミュニケーション担当幹部を確立しましょう。
★9 病院の医療事故対策理念の要素
・オープンで誠実なコミュニケーション(情報提供)に関する誓約を伝えましょう。
・医療従事者へ、時機を得て“必要なときに必要なものを必要なだけ”提供する指導を実施しましょう。
・医療従事者に、対処とコミュニケーションに関する教育をしましょう。
・共感と誠意を持って、事故のことをご家族とコミュニケーションすることを、保証しましょう。
・スタッフに対し、感情面のサポートを提供しましょう。
・必要な書類と報告書の作成を保証しましょう。
・一般市民とオープンに対話しましょう。
・コミュニケーションや事故の報告に関する手法を開発しましょう。
★10 医療事故の初期対応
・患者さんのさらなる害を防ぐため、患者さんを落ち着かせ、傷害を軽減しましょう。
・適切な治療のできない医療提供者、安全でないシステム、装置といった残存する脅威を一掃しましょう。
・事故につながったと見られる薬、装置を保全しましょう。
・最初の医療提供者が機能しない場合、代役をたてましょう。
・患者さんとご家族に一貫したコミュニケーションがなされるよう、速やかに医療チームに事故の概要を伝えましょう。
・患者さんとご家族とのコミュニケーションに関して、だれが第一責任者になるかを決めましょう。
・記憶が鮮明な内に、事故の原因を調べましょう。
・適切な病院の管理者に、事故について報告しましょう。
★11 医療事故の分析
・根本原因の分析を公式に行うべき事故の選定基準を確立しましょう。
・リスクマネージメントの部門に、事故の調査を実施させましょう。
・根本原因分析の参加者のために、ピアレビュー(同業者による相互評価)による擁護を確保しましょう。
・事故に関与していない上級スタッフメンバーに、根本原因分析(RCA)を促進させましょう。
・事故に関与しているすべての医療従事者を参加させましょう。
・事故の分析と介入の基本設計には、最善の手法を取り入れましょう。
・根本原因分析のため、患者さんとご家族にインタビューしましょう。
・根本原因分析の結果を、組織の幹部と理事会に報告しましょう。
・改善策が実施されることを保証する仕組みを確立しましょう。
・システム的な変更がもたらす有効性と起こりうる好ましくない結果の両方を監視しましょう。
・改善策に優先順位をつけるために、根本原因分析で得られたデータを集計し、追跡しましょう。
★12 報告システムについて
・報告を受ける人を特定しましょう。
・どのようにインシデントを報告するか、明確にしましょう。
・報告義務者を決めましょう。
・インシデント後の流れを明らかにしましょう。
・報告を、調査や是正措置につなげましょう。
・報告することに関して安全保障がなければなりません。
・監督者への報告義務を担保するような手順を備えましょう。
・広報担当部署へ連絡しましょう。
 
翻訳 東京大学 医療政策人材養成講座 有志 「真実説明・謝罪普及プロジェクト」  2006年11月16日